労災保険とは?企業側の手続き〜保険料の計算方法や注意点まとめ
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労災保険とは?企業側の手続き〜保険料の計算方法や注意点まとめ

労働者を1人でも雇っている事業主には、労災保険への加入が義務付けられています。

「3年に一度、見直しが行われる労災保険料率を用いた保険料の計算が面倒…」
「加入条件や適用範囲がよくわからなかった!」

など、不安を感じている人事労務担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回は、企業が絶対に抑えておくべき労災保険の加入・給付申請手続きの流れや保険料の計算方法などを解説します。

1.労災保険とは

労災保険とは、仕事中や通勤途中に起きた事故・災害によるケガや病気、障害、あるいは死亡した場合に保険給付を行う制度です。
正式名称は「労働者災害補償保険」といい、被保険者の社会復帰や被保険者の遺族への援助を行います。
パートやアルバイトも含め、雇用されているすべての従業員が保証対象です。

1-1.労災保険が適用される災害

労災保険が適応される災害には、大きく分けて「業務災害」「通勤災害」の2つがあります。

業務災害
業務災害とは、業務上のケガや病気、障害、死亡のことです。
ここでいう「業務上」とは、業務が原因となったということであり、業務とケガなどの間に一定の因果関係があることを意味します。
業務時間内であっても、業務に関係のない私的な行為を起因とするケガや故意によるケガは該当しません。
業務災害と認められるケースの例としては、以下のようなものがあります。

  • ●揚げ物用フライヤーに点火中、フライヤー内にガスが充満し爆発的に火が吹き出し、両手の肘から下を火傷した。
  • ●小学校で看板の文字消し作業中、ジクロロメタン中毒となり入院した。

(出典サイト:厚生労働省「労働災害事例」)

通勤災害
通勤災害とは、労働者が家と職場の往復など、所定の移動中に被ったケガや病気、死亡のことです。
寄り道をして所定の経路から外れたり、経路の途中で通勤と関係のない行為をした場合は、その間およびその後の移動は保障対象外となります。
ただし、例外的に日用品の購入や職業訓練、選挙権の行使、病院での治療、要介護状態にある家族の介護などの行為は認められています。
通勤災害として認められるケースの例はとしては、以下のようなものがあります。

  • ●出社するため、木造モルタル二階建てのアパートの二階の自室を出て階段をおりるとき、転倒して負傷した。
  • ●夫の看護のため、姑と交替で一日おきに寝泊まりしている病院から出勤する途中に負傷した。

(出典サイト:労務安全情報センター「労働実務Q&A集」)

1-2.労災保険が適用される加入対象者

労災保険には加入要件がなく、雇用形態にかかわらず全労働者に適用されます。
ちなみに労災保険の加入は、任意ではなく義務です。
1人でも労働者を雇用したら、事業主は労災保険に加入して、保険料を納付しなくてはなりません。労働者自身が加入するのではなく、事業主が加入する保険です。

また、労災保険で保護されない事業主や自営業者、家族従事者など、労働者ではないものの保護するのが適当だと判断される職業者は「特別加入制度」への任意加入が認められています。

特別加入制度
特別加入できる方の範囲は、

  • ●中小事業主など
  • ●一人親方など
  • ●特定作業従事者
  • ●海外派遣者

の4種に大別されます。
中小事業主に分類される範囲は以下の通りです。

業種労働者数
金融業、保険業、不動産業、小売業50人以下
卸売業、サービス業100人以下
上記以外の業種300人以下

労働者数をカウントする際は、通年雇用をしていない場合でも、年間100日以上雇用している場合は労働者数に加算します。
また1つの企業に工場や支店などがいくつかある場合、それぞれに使用される労働者数を合計します。

(出典サイト:厚生労働省「特別加入者の範囲」)
(出典サイト:一般社団法人全国労働保険事務組合連合会「労災保険の特別加入制度)

1-3.労災保険の給付金の種類

労災保険の給付金は7種類あります。

給付が受けられるケース保険給付の種類
ケガや病気で治療を受けた療養(補償)給付
療養のため休業する休業(補償)給付
療養を開始後1年6カ月で治癒せず、傷病等級に該当する傷病(補償)年金
障害が残った障害(補償)給付
常時または随時介護が必要となった介護(補償)給付
死亡した遺族(補償)給付、葬祭料(補償)給付
脳・心臓に異常がある二次健康診断等給付
※業務上災害による給付を「~補償給付」といい、通勤災害による給付を「~給付」といいます。

(出典サイト:厚生労働省「労災給付の一覧等」)

2.労災保険の加入・給付申請手続きの流れ

労災保険の加入や給付の申請、保険料の申告などの窓口は、会社の所在地を管轄する労働基準監督署です。
労災保険の手続きは、一般的に以下の流れで行われます。

  • ①労働者から会社に労働者災害が起きた旨を報告
  • ②労働基準監督署長宛に必要書類を提出
  • ③労働基準監督署の調査への対応
  • ④保険金の給付

労災が発生した場合は、原則労災に遭った本人、またはその家族が申請を行います。
ただし、労働者の負担を軽減するため、多くの企業では代理手続きを行っています。

ここでは、労災保険の加入手続き〜給付申請について説明します。

2-1.加入書類の提出

労災保険へ加入するためには、管轄の労働基準監督署へ以下の書類を提出する必要があります。

  • ●労働保険保険関係成立届
  • ●労働保険概算保険料申告書
  • ●履歴事項全部証明書(写し)1通

書類の提出期限は、保険関係が設立した日の翌日から10日以内です。
労働保険概算保険料申告書のみ提出期限が50日以内ですが、ほかの書類と同時に提出し50日以内に納付を行うのが一般的です。

2-2.請求書への記入

労災保険の給付を受けるためには、保険者である政府(国)に対して請求する必要があります。
窓口である各地の労働基準監督署へ必要書類を提出してください。
提出する書類は給付の種類によって異なります。
注意事項をご確認のうえ、所轄の労働基準監督署あるいは厚生労働省のホームページからも請求書をダウンロードしてください。

2-3.請求書と添付書類の提出

労災保険の申請に必要な請求書は、「給付の種類」「業務災害か通勤災害か」によって異なります。
また、医師の診断書やレントゲン写真、事故証明書など、申請時に別途添付書類が必要なケースもあります。
詳しい内容は「労災保険請求のための ガイドブック - 厚生労働省」をご確認ください。

申請期限は種類によって異なるため注意しましょう。

  • ●2年:療養補償給付や休業補償給付、葬祭給付、介護補償給付、二次健康診断等給付
  • ●5年:障害補償給付と遺族補償給付

3.労災保険料の計算方法

基本的に事業主が全額負担する労災保険料は、以下の計算式で求められます。

労災保険料=対象労働者の賃金総額×労災保険料率

労働保険料は、毎年4月1日〜3月31日までの見込み賃金額をもとに計算します。
賃金に含まれるお金は毎月の給与やボーナスで、労働者の平均給与×労働者数で賃金の総額を求めることができます。
事業主は業種ごとに決まっている労災保険料率を用いて、6〜7月に概算保険料を算定しなければなりません。
労災保険料率は、過去の3年間の労災発生状況をなどを考慮して、原則3年ごとに見直しされます。
労災が多く発生すると保険料率が上がる確率が高まり、労災を防ぐことができれば保険料の減額に繋がります。
平成30年4月1日に改定された事業種別ごとの労災保険率は、厚生労働省のホームページにてご確認ください。

4.労災保険に関する注意点

従業員の健康やその家族の生活を支える労災保険ですが、企業はどのような点に注意して扱ったらよいのでしょうか。
労災保険の加入を怠った場合や保険料を滞納した場合などシーン別に、企業が注意すべき点と規則を守らたなかった場合の罰則をそれぞれ合わせて確認しておきましょう。

4-1.加入を怠った場合

労災保険の加入を行った場合、以下のような処分が下されます。

●過去に遡って保険料を徴収されるほか、追徴金を徴収される
都道府県労働局や労働基準監督署又、公共職業安定所(ハローワーク)から指導を受けたにもかかわらず、労働保険の加入手続きを行わない事業主に対しては、手続きを行っていなかった過去の期間に遡って保険料を徴収するほか、追徴金を徴収されます。
また、労働保険料や追徴金を支払わない場合は、滞納者の財産について差押えなどの処分が行われます。

●労働災害が生じた場合、労災保険給付額の全部または一部を徴収する
事業主が故意または重大な過失により労災保険の加入手続きを行わず、未手続きの期間中に生じた事故について労災保険給付を行った場合は、労災保険給付に要した費用に相当する金額の全部または一部を事業主から徴収します。

4-2.保険料を滞納した場合

企業は労働保険料を滞納した場合、以下のような、事業主のための雇用関係助成金を受給できない可能性があります。

  • ●雇用調整助成金(休業などによって雇用維持を図る事業主に助成)
  • ●特定求職者雇用開発助成金(高年齢者や障害者など、就職が特に困難な者を雇い入れる事業主に助成)

4-3.労災指定病院以外で受診した場合

労災指定病院で治療を受ける場合、病院の窓口にて労災である旨を伝え、後ほど必要書類を提出することによって治癒するまで無料で療養を受けることができます。

一方、労災指定病院以外で受診する場合は一旦費用を全額立て替えなければなりません。
また、提出書類に担当医師の証明を受けて領収書を添付し、労働基準監督署へ提出するなど、被災者労働者にとってかなりの負担となります。
ケガや病気で療養補償給付を受ける場合は、窓口での支払いが不要な労災指定病院での受診が安心です。

まとめ

労災保険へは加入義務があり、「知らなかった」では済まされません。
万が一違反があった場合、罰金が科されるだけでなく、社会的な信用を失うリスクが高まり、企業にとって命取りになることもあります。
労働者のため、企業のためにも、労災保険の仕組みを理解して適切に手続きを進めましょう。

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